2014年1月1日星期三

【舩越園子コラム】日本オープンの惨状と全米プロの未来




2013年10月28日11時52分






日本オープン月曜の最終ラウンド 緊迫の最終組もさみしくて…(撮影:上山敬太)






 今年の日本オープンのギャラリー数が激減したという話が海を渡ってアメリカにも聞こえてきた。

 悪天候で大会は5日間に渡ったが、ギャラリー数は5日間合計でわずか9,139人。5日目の最終日は日本のナショナルチャンピオンが決まる日だった。本来なら、その胸躍る瞬間を見たい一心でゴルフファンが競って足を運び、優勝争いに釘付けになるはずの日。その5日目のギャラリー数が967人だったというのだから、日本の男子プロゴルフ界の惨状、窮状が露呈したと言わざるを得ない。

 その原因は米ツアー参戦中の石川遼松山英樹が不在だったから――というのが、日本における関係者の大方の見方のようだ。

 スターが出場すれば大勢のギャラリーが押し寄せるが、スター不在となればギャラリーは激減。この傾向はもちろん世界共通で、米ツアーでもタイガー・ウッズフィル・ミケルソンが出るか出ないかによってギャラリー数は大きく異なる。

 だが、たとえビッグスターが出なくても、米ツアーの大会で1日のギャラリー数が1000人前後まで落ち込むことは絶対にない。大会4日間のギャラリー数の合計が1万人割れするなんてことは起こりえない。

 となれば、日本オープン低迷の原因は、石川と松山が不在だったことだけではなく、2大スター不在という以外に、もっと大きくて根本的な原因があるはず。

みなさんは、そうは思いませんか?

【関連ニュース】日本オープンギャラリー1万人割れ…この件どう思う?

成功者の姿勢

 日本のメジャー大会である日本オープンがギャラリー数の低迷で苦悩したのとちょうど前後するようなタイミングで、米ゴルフ界ではメジャー大会の在り方に関するこんな話が広まっていた。

 メジャー4大会の1つである全米プロを米国以外の世界のどこかで開催するという妙案が実現に向けて討議されつつあるという話だ。とはいえ、すぐというわけではない。実現は早くても2020年以降で、米国外での開催は10年に1度か2度だけという条件付きだ。が、大会運営、興業収入、テレビ中継、ギャラリー数、何を取っても成功している全米プロが、どうしてわざわざ米国外での開催を真剣に検討しているかというところが注目点だ。

 全米プロの主催者は全米のクラブプロを統括しているPAGオブ・アメリカ。全米プロを米国以外の世界のどこかで開催できれば、その地におけるPGAオブ・アメリカの認知も高まり、クラブプロ統括という業務の足場や登録している米国のクラブプロたちの仕事の機会も広がるはず。

 そうなれば、PGAオブ・アメリカにもっとお金が入り、そのお金が未来の全米プロの大会運営に回され、選手も関係者も足を運ぶギャラリーも、みんながハッピーになれるはず。すでに成功者であるPGAオブ・アメリカが、さらなる成功を望み、そんな「Win-Win」の図式を長期的視野で見据えているのだ。

日本オープンは「SOS」

 海の向こうのアメリカの話だろ?日本とは事情が違うだろ?関係ないだろ?

 そんなふうに突き放してしまったら、日本の男子ゴルフ界の惨状は悪化していく一方だ。全米プロの話は単なる一例。海外には、世界には、日本のゴルフ界が大いに参考にしうる事例がたくさんある。

 米ツアーや欧州ツアーの成功例はもちろんのこと、日本より後発でありながらすでに日本を追い抜き、潤っているアジアの国々のツアーの成功例もある。

 日本のゴルフ界の関係者は、もっと積極的にそうした例に目を向け、採り入れてほしい。全米プロの例のようにビジネス寄りの妙案を考案できる人材が不足しているのなら、そういう頭脳や知識を持ち合わせているビジネスのプロの力をもっと借りてほしい。

 日本は世界の中でもスター依存体質が強い国だ。一部のスターを持ち上げるのはいいけれど、それが「オンリー」になってしまい、そのスター以外は「ゼロ」になりがちだ。その傾向に関しては日本のマスコミの姿勢にも大いに責任はあるだろう。

 過激なスター依存体質をいきなりすべて変えるのは難しいとしても、その度合いを軽減することはできるはずだ。そして、ビッグスターがたとえその場にいなくても、注目や集客、収益において「最低限、このレベルだけはキープできる」というシステムを真剣に早急に構築していかない限り、日本の男子ツアーが上向くことは難しいだろう。

 日本オープンの今回の惨状について、石川や松山の不在を理由に掲げ、石川や松山以外の選手たちの力不足、魅力不足を嘆いたり指摘したりする前に、まずは日本の選手たちが戦いたくなる土俵、戦っていける土俵を作ることが急務だ。

 今後、どんなに有能で有望なゴルファーが日本に出現しても、そのゴルファーは魅力的な土俵が日本になければ、戦う場を日本国外に求めるしかなくなってしまう。

 大魚をみすみす逃がし、「大魚がいないから」と嘆く日本のゴルフ界。多くの人が他力本願的である今の姿を変えなければいけない。もっと門戸を広げ、もっと学び、もっと情報や人材を採り入れ、そうやって向上していくべきだ。

 今回の日本オープンは、そんなメッセージ、そんなSOSを送ってきたと受け取るべきだ。

文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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